五所川原 立佞武多(たちねぷた)祭り
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運行開始前
←運行開始を待つ人々。吉幾三さんが歌う「立佞武多(たちねぷた) 」が、店先に置かれたラジカセから繰り返し流れていました。 ←運行開始直前。道路が閉鎖されました。交差点は、見物客にとって最高そして最後の見物席開放となるので陣取りがたいへんです。
←スタート場所へ急ぐ跳人が道路を小走りに走ってきました。すごくピチピチしていたので、写真を撮らせて欲しいと頼むと、飛び切りの笑顔でポーズをとってくれました。すると、私の周囲の人も写真を撮り出し、一緒に記念撮影などを行い、彼女たちはしばしアイドル状態となり、少々驚いていました。撮影会が終わると、またスタート場所へ駆けていきました。
運行隊列
←午後7時、いよいよ運行開始です。先導は、地元のスーパースター吉幾三さんです。吉さんは、太宰治と同じ北津軽郡金木町(その後五所川原市と合併)の出身です。 ←本隊がやってきました。先頭は、大きな大きな津軽大太鼓です。「あすなろ大太鼓」といい、直径3.2m、長さ3.6mの大太鼓です。夜空を震わす太鼓の音が、段々大きくなってきます。
→太鼓の上下および前後から10人以上が、調子をそろえて叩きます。目の前を通過するときは、空気だけではなく大地も揺さぶられているように聞こえてきました。 ←大太鼓に続き、ねぷた登場です。最初に行くのは、立佞武多ではなく、青森市で見られる高さの低い山車です。
→低い山車が出払うと、いよいよ立佞武多の出陣です。夜空に突出する立佞武多が、次々に目の前を通過していきます。
←行列の最後には自由参加と思われる跳人が、待ちきれなかったかのように「ヤッテマレー。ヤッテマレー・・・」と連呼しつつ跳ね回っていました。 ←1時間ほどで全ねぷたの出陣が終わる頃、出発地点には早くに出陣したねぷたが戻って来ました。
参加団体の隊列 各参加団体は、最初に太鼓、次に笛、鉦、そして山車、跳人と続くのが多かったです。
←太鼓は、三つあるいは四つ横につなげたものが多かったです。大太鼓に比べれば、はるかに小さいけど、豪壮な音を鳴り響かせていました。 ←叩き手は、太鼓の後から、歩きながら叩きます。太鼓を乗せた台車の速度は一定ではなく、急に止まることもあり、叩き手は進行速度も気にしなければなりません。叩き手の後には、バチを持った人が何人もいて、疲れればいつでも交代できるようにしていました。
←太鼓の次は、笛です。笛の音は軽妙で、太鼓の重厚さとは対照的です。 ←そして、鉦が続きます。この鉦は、手振り鉦(てぶりがね)といい、ジャガラギといわれることもあります。灰皿のような形をした真鍮製で、音も灰皿を叩いたように「シャカシャカ」と鳴ります。太鼓や笛のように大きな音ではありませんが、とても賑やかな感じに聴こえます。五所川原は、青森や弘前よりも鉦の比率が高かったです。
←太鼓、笛、鉦の囃子方に先導され、山車が厳かに進んでいきます。山車の原型は灯篭で、それがこんなに巨大化してしまったそうです。 ←山車の後には、町内会や学校OB・OGなど出場団体の関係者が跳人として列に加わります。みんなが、もっと激しく跳ねるものと思っていましたが、時折「ヤッテマレー」の掛け声をかけるくらいで、静かに歩いていく人が多かったです。五所川原では、集団で調子を揃えて跳ねることはなく、囃子方も含め跳ねたい人が跳ねたい時に跳ねるという感じでした。ねぷたは、あくまでも地元の人が楽しむお祭りで、気に入った服を着て家族単位で参加するというのが基本のようでした。
それぞれの見所 
大太鼓 大太鼓の音は、低音のためか、大きな音というよりも、空気を揺さぶり、大地を震わせるように聴こえました。
←先頭を行く大太鼓は、見応えがあります。太鼓の大きさ、叩き手の人数、真剣な表情、これぞ日本の祭り、厳かさと豪快さが感じられました。 ←前だけではなく、後からも叩きます。

→太鼓の上の人は、締め紐を跨いで座り、とても不安定、落ちることは無いのか、また尻が痛くならないのか、心配になります。
太鼓 
←大太鼓の音が少し小さくなると、大小のねぷたが次々に進んでいきます。太鼓、笛、鉦それぞれ音色の違う音が調和して響き渡り、沿道の観衆からは「ぅおー」といったような歓声があがりました。 ←太鼓は、三〜五つ横につなげて台車に乗せて曳かれていきました。
←叩き手は真剣そのもの、また力を込めて叩き続けます。リズムは、単調ですが、聴き続けていると、体中の血がそのリズムに合わせて流れているような心地よさを感じます。 →中には、体よりも大きな太鼓を肩からさげて叩く人もいました。これは、しんどそうでした。
青森型ねぷた 
←立佞武多だけではなく、背の低いねぷたもたくさん出陣していました。 ←ねぷたの後ろ側には、美人画が描かれていました。
立佞武多 このねぷたが五所川原の特徴です。
【弁慶の立ち往生】残酷な場面を表現したものが多いけど、顔の表情などどこかユーモラスで凄惨さは感じられません。
→目の前を通過するときには、一段と迫力が増して見えます。
【不撓不屈】今年の春、立佞武多の館に行ったとき館内に展示されていたので、たった3ヶ月ほど前のことですが、懐かしかったです。
←真っ暗な夜空に浮かび立つ立佞武多、美しくもあり豪快でもあります。昔は、10km隔たった金木町の方からも見えたそうです。 ←立佞武多の表情は見る角度により少し違って見えます。この位置からだと、怒っているのはわかりますが、愛嬌も感じられます。
→これは、もう怒髪天を衝くすごい形相です。
【夢幻破邪】これも立佞武多の館に展示されていました。これは、今年の新作(初陣)で、高さ22.4mと歴代の立佞武多の中で最も高く、重さは19トンもあります。春、展示されている「夢幻破邪」を見て、これが運行されるさまを是非見てみたいと思った立佞武多です。
→春、展示されていた3台の中で一番気に入り、長い時間見惚れていた立佞武多なので、もはや他人とは思えませんでした。「不撓不屈」と「夢幻破邪」の他に「絆(きずな)」という立佞武多が展示されていましたが、これは引退し、頭だけ弘前駅に飾られていました。
←立佞武多は、電柱よりはるかに高く、運行コースの路上を横切る電線は地下に埋設されています。 ←立佞武多の背中にも美人画が描かれていました。

→立佞武多は、前後左右どこから見ても色彩豊かで丁寧に仕上げられています。
ちょっと変わったねぷた 
←こんなねぷたも参加していました。
←手作り感たっぷりのかわいいねぷたです。親子で一生懸命作った様子が想像され、微笑ましかったです。お父さんが「まなむ」さんで、息子が「たけむ」君? お母さんはどうしたのかな? 父子家庭? 余計な想像までしてしまいました。
←今年は、太宰治の生誕百周年、五所川原に限らず青森でも弘前でも、様々なイベントが行われています。特に五所川原(旧金木町)は、太宰生誕の地、生誕百周年はねぷた祭りのメインテーマのようになっていました。
曳き手 
←ねぷたは、すべて人力で運行されます。ねぷたを曳いていく人たちを「曳き手」というそうです。何しろ重いので、重労働です。傍には交代要員が共に歩き、渇いた喉を潤すためにジュースなど飲み物を氷水に浮かべた大きな樽を曳いていく組もありました。
←これは、「夢幻破邪」の曳き手の様子です。重さが19トンもあるので、曳き手の人数も多かったです。
→ねぷたに繋がれたロープを引く人たちもいましたが、これは動力ではなく、ねぷたに手を添える縁起物のような感じでした。沿道の観客は、良い写真を撮ろうと、時折、行列の中にも入り込んできます。このロープは、「危険なので、これより中に入ってはいけません。」という役割も担っているように見えました。
 
←笛の音色、メロディはとても軽やかです。その音が重厚な太鼓の音と調和するのが不思議でした。太鼓は、地の底から沸き起こり、笛の音は軽やかに中空を吹き渡っていく、そんな感じでした。

→揃いの祭り袢天を着て、笛を吹く高校生。「五農」とは、五所川原農林高校の略称です。授業でお囃子の練習をしているのでしょうか。
手振り鉦(てぶりがね) 
←ちっちゃな子供から大人まで、手振り鉦を打ち鳴らしていました。大勢で鳴らしてもそれほど大きな音にはなりませんが、賑やかさを増していました。灰皿に似た形をしています。 ←大人は大きな鉦、子供は小さな鉦を叩いていました。
→うまく鳴らせないのか、それとも眠くなってしまったのか、泣きべそをかく子供をお母さんが励ましていました。
跳人(はねと) 
→行列が渋滞し立ち止まると、跳人や囃子方は見物客の方を向いて、演奏を続けます。 ←大きく口を開けているお母さん、何と言っていたのか? きっと、「やってまれー」だと思います。

→跳ねるのではなく、踊る人たちもいました。
←最後尾の自由参加と思われる跳人たちです。彼らのみ、少し異様なテンションでした。

→ビキニ姿の女性も混じっていました。
←左側のお母さんは跳人ではなく、見物客です。リュックを背負い、首から一眼レフカメラをぶら下げ、撮影ポイントを求めて走っていました。
撮影日時 2009年8月4日(火) 18:00〜20:30 曇り
感想 五所川原に到着し、早速見物場所を探しましたが、案の定簡単によい場所など見つかりませんでした。一休みしようと立佞武多の館へ入りましたが、ここも人が溢れかえり、腰を下ろすどころではありませんでした。運行コースに従って先に進むと、丸椅子に「1000円」と書いた紙が張ってありました。私設有料席のようです。これ以上先へ行ってもよい場所は無さそうなので、1000円払い道路際の椅子席をゲットしました。8月8日も同じ席で見物し、その時気がついたのですが、1000円には飲み物・おつまみが含まれていて、居酒屋の店先に腰掛けて、ちょっと一杯という形式のようでした。公道で勝手に椅子席販売をして問題にならないのか、気になりましたが、このようなことで当局も大目に見ているようです。とにかく沿道は、場所取りが激しく、こんな席でも用意してもらわないと、遠来の観光客は、隅っこに追いやられてしまいます。ありがたい、私設観覧席でした。運行コースの最初の曲り角の手前、出発地点も見渡せる絶好ポイントでした。未確認ですが、お店の名前は居酒屋「竜」さんだと思います。Mapion地図で縮尺を1/1500にするとお店の名前が表示されました。この日は、システムを知らなかったので、何も頼みませんでしたが、運行が始まりお店が一段落すると、胡瓜の漬物を持ってきてくれました。

立佞武多は、やはり大きかったです。すぐ近くに電柱やビルなど比較対象物があるためか、立佞武多の館で見たときよりも大きく見えました。色も鮮やかで綺麗でした。大型立佞武多は、3台運行と案内されていましたが、皆大きくてどれがその3台なのかわかりませんでした。高さ20m内外の立佞武多が列を成して曳かれていく様子は、幻想的かつ雄大、初めて目にする光景でした。

お囃子は、太鼓が素晴らしかったです。大太鼓は言うまでも無く、各参加団体の太鼓も夜空に轟いていました。各チームの太鼓は、横に3〜4個並べて曳かれ、叩き手は後を歩きながら叩きます。目の前で大きな音を響かせた太鼓が通り過ぎ、音が小さくなると、次のチームの太鼓の音が大きく近づいてきます。単調だが力強いリズムの繰り返しに酔い痴れました。

跳人は、少々意外でした。青森のカラス族の印象が強いせいか、激しく跳ね踊るのかと思っていましたが、跳ねていたのは一部の人で、しかも激しい動きはしませんでした。参加者には子供が多く、それも親に手を曳かれた幼児がたくさんいました。ねぷたは、本来、綺麗あるいは面白く化粧をし、好きな祭り服を着て、家族で参加して楽しむもののようでした。ちっちゃな子が多いので、やたらに跳ね回ったら危険です。酒も飲まないように申し合わせているようでした。

跳人や手振り鉦を手にした囃子方は、激しい動きはほとんど無く、お行儀のよい行列でした。しかし、皆笑顔でした。特に子育て最中のお母さんの笑顔が開放感に満ち素敵でした。子供の手を曳いて歩きながら、しょっちゅう身を屈め子供に何事か語りかけていました。

渋滞で行列が停まると、多くの跳人や囃子方は、見物客の方に向きを変えます。見物客と顔を合わせて手振り鉦を叩いたり、笑顔を見せてくれました。見物客からも拍手や声が飛びます。すると笛の囃子方なども近くにやって来てくれます。ねぷた祭りは、参加者だけで行われるのではなく、見物客もいっしょになって楽しむお祭りでした。見物席でも太鼓のリズムに合わせて手を打ち、「ヤッテマレー。ヤッテマレー。」と掛け声をかけていました。
情報 <運行場所>五所川原市大町、本町、川端町他

<運行コース>立佞武多の館近くの交差点を出発点とする1周約1.3kmの周回コースを左回りに回ります。出発点を出ると、国道101号線(通称『大間越街道)を岩木川の方へ行き、最初の信号を左へ折れ、消防署の前を通って柳町まで直進します。そして、ローソンのある交差点を左へ曲がり、増田病院の前を通過して小泊通りと交わるところまで行きます。それから小泊通りをしばらく進み、大町の大きな交差点を左へ曲がり、出発点へ戻ります。

<呼称>五所川原では、「ねぷた(neputa)です。背の高い縦長のねぷたは、「立佞武多(たちねぷた)」といい、漢字で表記します。

<掛け声>五所川原の掛け声は、「ヤッテマレヤッテマレ」です。「やっつけてしまえ…」の津軽弁です。少々、荒っぽいです。

<見物のコツ>インターネットを見ると、有料観覧席はお薦めできないという人が多かったです。青森もそうですが、有料観覧席は当たり外れがあり、見難い場所に割り当てられることがあります。2〜3時間立っていられるなら、自分で良い場所を探す方が良いと思います。

駅に近いところは混雑が激しいです。大町交差点周辺は大変な混雑です。立佞武多の館近くも混みます。駅および館から遠ざかれば、混み具合は多少緩和されます。

道路際で座っている人の後ろから見る場合、歩道に屋根があるところは避けた方が良いです。屋根が邪魔で立佞武多の上のほうが見えなくなります。

大町交差点と立佞武多の館までの道も避けた方が良いと思います。ここは、運行コースの最後で、ここにねぷたがやって来る頃、出発点近くの大間越街道などで見ていた人が、ゾロゾロ戻ってきて、駅へ急ぐので落ち着きません。

少し、早めに来て、私設有料観覧席を確保し、どこかで時間を潰すのが良いと思います。昼頃に来れば、太宰治の生れ故郷へ行って来ることもできます。

<コインロッカー>JR五所川原駅にあります。

<公式HP>http://www.tachineputa.jp/festival/index.html
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